カトリックさいたま教区/CATHOLIC SAITAMA DIOCESE

司教メッセージMESSAGES

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年間第23主日 被造物を大切にする世界祈願日 マルコ 7・31-37

2021.12.5 (日)
兄弟姉妹のみなさん、
 今日は「被造物を大切にする世界祈願日」です。
 教皇フランシスコは2015年8月6日、ご変容のお祝いの日の言葉で、正教会が1989年に定めたように、9月1日を「被造物を大切にする世界祈願日」と宣言され、それ以来、毎年祝ってきました。 正教会の兄弟姉妹との一致のうちに、他の教派やキリスト教共同体に支えられ、カトリック教会は「被造物を大切にする世界祈願日」を祝います。この日は、宣言されたその日に教皇フランシスコが祈られたように、「被造物の管理人となるという人類自らの召命を再確認し、神のすばらしい作品である被造物世界の管理をわたしたちに託してくださったことを神に感謝し、被造物を守るために助けてくださるよう神に願い、また、この世界に対して私たち人類が犯してしまった罪へのゆるしを乞うのにふさわしい機会を、各々のキリスト者と共同体に与えてくれる日」なのです。

日本の教会:エコロジー的回心のプロセスを継続
 日本の教会では、この祈願日を9月の第一日曜日にお祝いします。そして教皇が提案する、被造物に対する姿勢をもって、10月6日まで続きます。その日はアシジの聖フランシスコのお祝いです。日本の司教団は、回勅ラウダト・シ(246項)にある、被造物に対するキリスト者の祈りを元に、短い祈りを作りました。定期的に祈りながら、被造物を守る人になれましょう。さらに、日本の教会では、2019年11月の教皇フランシスコの来日に対する感謝のプレゼントとして、9月を、被造物を守る意識を高める月にすることにしました。そのために、まず、被造物への深い尊重の姿勢が必要です。説教の最後に、日本の司教たちが提案している祈りを紹介します。9月は、毎日、それを祈って過ごしましょう。

自然との個人的な体験を振り返る
 私たちはみんな、子どもの頃から自然に囲まれて生きてきました。植物、虫、動物、魚、そして、廻る季節の体験、夜空の月や輝いている星の光景など、素敵な思い出をお持ちのことでしょう。
 わたくしは8歳まで、海から1キロの距離にある大分県佐伯市に住んでいました。山、川、田んぼと共に生活しました。小鳥や虫、草や木の名前を覚えました。それは両親や叔父たちのおかげです。彼らから学んだことは、大きな家族として自然と共存しなければならないということでした。
 その後アルゼンチンに移住し、アンデス山脈に近い地域に住みました。そこでは年に2〜3回しか雨が降りませんでした。乾燥した山々、日本では見たこともない木々、気候も景色も異なっていました。そこはたびたび地震が起こる地域で、特に二つの大きな地震が1944年と1997年にありました。それによって破壊された物があり、たくさんの犠牲者が出ました。日本に戻った1997年、私は昔話の「うらしま太郎」のように感じました。日本はとても進んでいました。慣れるのが大変でした。日本語と日本の文化を勉強している時、有名な映画監督である宮崎駿の作品を知ることができました。その中で私に一番インパクトがあったのは、「となりのトトロ」でした。もう一つ助けになったのは、小学生になった従兄弟の子どもたちと観たビデオ。彼らのコメントは、大人になった今の私に、子どもの頃を思い出させてくれました。その時、もう一度確信したことは、人は被造物との交わりなしには完全な人間になれないということでした。被造物を守ることによって、人間と自然との関係が向上し、人間だけでなく、被造物全体が大きな家族であることを感じさせ、この美しい地球を、かけがえのない、被造物全体の共通の家として生きることができるのです。

福音(マルコ 7:31−37):「エッファタ、開け」。イエスは耳が聞こえず、話せない人を話せるようにした
 イエスはユダヤ地域の外、デカポリス地方(10個の町)で、耳が聞こえず話せない人の耳を開き、舌を解き、話せるようになさいました。同じように、イエスは、私たちの視野を開き、唇を解いてくださり、被造物すべてを守るための協力者になることを勧めています。具体的には、置かれている場所で、各自が行動に参加すること。ゴミを捨てる時、各市町村のルールに従うこと。地域の掃除に参加すること。子どもたちに、共に生きるための教育をすることを勧めています。

第一朗読(イザヤ 35:4−7a):荒地に水を湧き出させる主
 イザヤの言葉ももっと広い視野で読み直すことができます。自分たちの都合で物を利用し、経済的な利益に基づいて自然を破壊していることに気づかされます。中国のゴビとサハラの砂漠が広がらないように数年前から闘っています。しかし、水の問題、その不足、あるいは気候変動をコントロールできない状態は人間にとって深刻です。飲料水も、土地を潤す水も、すべては神からの恵みです。私たちはそれを感謝し、分かち合って守らなければなりません。

自然と共に、私たちみんなが兄弟姉妹
 ヤコブの手紙(2:1-5)で願っていることを、祈願日に照らし合わせながら終わりたいと思います。使徒たちが共同体の典礼集会に参加した時、とても悲しかったのです。それは参加者の間に違いがあったこと。金持ちが目指す場所は良い指定席、他の貧しい人たちの席はそうではありませんでした。これは私たちの集会でも許されないことです。特に、祈るために集まっている時、私たちはみんな兄弟姉妹であることを忘れてはいけません。
私たちはヤコブのこの叫びを広げましょう。教皇フランシスコが三つ目の回勅“Fratelli tutti”(みんな兄弟)(アシジ2020年10月3日公布)で言われているように、主イエスにおいて、私たちみんなが兄弟です。兄弟愛の精神を、毎日育てましょう。そうすることで私たちは、被造物と私たちの「共に暮らす家である地球」を保護する人になります。

すべてのいのちを守るためのキリスト者の祈り
宇宙万物の造り主である神よ、
あなたはお造りになったすべてのものを
ご自分の優しさで包んでくださいます。

わたしたちが傷つけてしまった地球と、
この世界で見捨てられ、忘れ去られた人々の叫びに
気づくことができるよう、
一人ひとりの心を照らしてください。

無関心を遠ざけ、
貧しい人や弱い人を支え、
ともに暮らす家である地球を大切にできるよう、
わたしたちの役割を示してください。

すべてのいのちを守るため、
よりよい未来をひらくために、
聖霊の力と光でわたしたちをとらえ、
あなたの愛の道具として遣わしてください。

すべての被造物とともに
あなたを賛美することができますように。

わたしたちの主イエス・キリストによって。
アーメン。
(2020年5月8日 日本カトリック司教協議会認可)