カトリックさいたま教区/CATHOLIC SAITAMA DIOCESE

司教メッセージMESSAGES

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年間第27主日 マルコ 10・2-16

2021.12.3 (日)
兄弟姉妹のみなさん
 明日10月4日は1226年にたった44歳で亡くなった、アッシジの聖フランシスコ(イタリア人)のお祝いです。教会で最もみんなに慕われている聖人で、今の教皇が歴史で初めてこの聖人の名を選びました。そしてまた、私たちの共通の家である地球を守ることについて、2015年に教皇が書かれた回勅の最初の言葉は「ラウダト・シ(主よ、あなたをたたえます)」でした。2020年、兄弟愛と社会的友情についての「Fratelli tutti(兄弟のみなさん)」は、アッシジの聖フランシスコに着想を得ています。

 2019年11月、教皇フランシスコは日本を訪問されました。それは新型コロナウイルス感染が広がる直前でした。日本の教会は、教皇様の来日への感謝の印として、毎年9月1日から10月4日にまでを、「すべてのいのちを守る祈り」をもっと積極的に祈り、そのように生きる月としました。

 今日の説教は、創世記が記している女性の創造と、イエスご自身が語られたことからの発想を、福音のメッセージとして強調したいと思います。そのあと、神が作られたすべてのいのちに対して、人間が守らなければならない姿勢に立ち戻りましょう。

福音書(マルコ10:2−16):女性に向けられた男の権力に対して
 福音書では、ファリサイ人たちがイエスを試そうとして一つの質問をする場面が描かれています。これは重要なことです。なぜなら、ガリラヤの女性たちは大いに苦しんでいました。そして、それについてラビの学校では、二つの派の激しい議論がありました。議論の中身は男が妻を離縁することが合法か否か、ということでした。
現在、私たちが考える離婚ではありません。ユダヤ女性たちは、結婚生活の中で完全に男性にコントロールされて生きていました。モーセの律法によると、男の人は結婚の契約を破り、妻を家から追い出すことができたのです。しかし男の人に支配されている女性は、同じことはできませんでした。
 イエスの答えはみんなを驚かせます。律法学者たちの議論の中には入りません。イエスは神のご計画の原点を発見するように招きます。それは法や決まりの上にあるものです。当時の男性優位の法律は、男の人たちの心の頑なさによって、イスラエルに適用されていました。男性が女性を支配し、自分の考えを押し付けていました。
 イエスは人間の元々の神秘を深めます。神は男と女を平等にお造りになりました。男性に、女性への権力を与えて造った訳ではありません。女性が男性に従うために造られたた訳でもない。男性と女性の間には支配があってはならないのです。
イエスは、律法の定めを超えた夫婦間のビジジョンを提供します。女性と男性は「一つの肉」になるために結ばれる(創世記2:18)。イエスの時代にあったように、男性が女性を支配するのではなく、互いに与え合う生き方を始めます。

 この結婚の計画は、イエスにとって人間的な愛の最高の表現です。男性に、女性を自分の持ち物のように支配する権利はない。女性は、男性に支配されて生きることを受け入れてはならない。神御自身が、自由と無償の愛を持って共に生きるよう人を引き寄せています。ですから、イエスははっきりと言います。「神が結び合わせてくださったものを、人は離してはならない。」(マルコ10:9)

第1朗読(創世記2:18−24):人間と、神が造られた他の被造物の関係においての新たなビジョン
 残念ながら、数世紀にわたって、今日読まれた創造の物語りは、アダムの肋骨からつくられた女性が、男性より低いと考えることを正当化するために利用されてきました。しかし、更に、緊急を要することがあります。神が造られた全てのものに対する精神と姿勢を変えなければなりません。なぜなら、聖書のはじめ、創世記が最初に、人がすべての生き物に名を付けたことが書かれています。人が創造に関して絶対的な主になってしまったと受け取られます。
 その結果、今では破壊的な状況に苦しむようになりました。自然が人間によって破壊され たからです。温暖化と環境汚染がその結果です。幾万の人に気候変動が影響を与えていることを私たちは実感しています。持っているものを失わせたり、多くの人たちが生きるために移動しなければならないこと。間違いなく、戦争は、人が移動する痛ましい原因として続いています。それによって、何万もの人たちが難民になっています。多くの国では、彼らに永住ビザを与えていません。
 19世紀に世界を大きく飛躍させた産業革命が、今日に至って最大の発展を見せています。それは大企業を見れば明らかです。経済的利益だけを考え、人間が他の生き物や、その環境や自然を尊重せずに搾取し破壊する:海、山、ジャングル、草原など。そのような出鱈目な行為に対して、世界レベルで様々な動きが始まっています。各々の宗教を含めて、それに参加するようになりました。地球と、そこに生きている全ての生き物を守るために。この動きに対して連帯する時、協力し合う時が来ているのです。キリスト者もこのような動きに参加する時です。それは祈りをもってその動きを支え、示された行動に協力することです。
 科学のお陰で、私たちみんなが住んでいる地球に関するデータがあります。この地球、人類とそこに住む全ての生き物の共通の家であるとして、地球は自然災害から回復する能力を持っている。46億年を通しておきた大規模な変動の後も、帰ってくることができました。地球は再生する力を持っているということです。
 大変動によって何万という生き物がいなくなったにもかかわらず、歳月をかけて地球は徐々に回復し、新たな命が生まれています。しかし現代は、何億年も昔の地球の氷河期、または小惑星の落下、あるいは海底地震などよりも、人間が次から次へと地球を破壊しているのです。

回勅「ラウダト・シ」:教皇フランシスコの呼びかけ
 このような状況を前にして教皇フランシスコは、科学者や宗教的、政治的リーダーの声を聞きながら、今日の危機を意識するよう呼びかけています。そして、今は、この地球がこれ以上に破壊されることをまだ避けられる時にあると訴えています。みんなが兄弟として一つになって、何でも消費する生活を改め、神が造られたこの自然を守るようにしなればなりません。
 ですから今日の説教を、教皇フランシスコの回勅の最初に言葉で終わります。

  私の主よ、あなたは称えられますように
  私たちの姉妹である
  母なる大地のために。
  大地は、私たちを養い、治め、
  さまざまの実と
  色とりどりの草花を生み出します。(ラウダト・シ1)