カトリックさいたま教区
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信仰講座 ARCHBISHOP COUSE

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■ 第53回「死を超えていきるいのちへ」  2018. 7.1説教


東京教区関町教会堅信式

第一朗読 知恵1・13-15、2・23-24
第二朗読 二コリント8・7、9、13-15
福音朗読 マルコ5・21-43

福音
イエスが舟に乗って再び向こう岸に渡られると、大勢の群衆がそばに集まって来た。イエスは湖のほとりにおられた。
会堂長の一人でヤイロという名の人が来て、イエスを見ると足もとにひれ伏して、
しきりに願った。「わたしの幼い娘が死にそうです。どうか、おいでになって手を置いてやってください。そうすれば、娘は助かり、生きるでしょう。」
そこで、イエスはヤイロと一緒に出かけて行かれた。大勢の群衆も、イエスに従い、押し迫って来た。
さて、ここに十二年間も出血の止まらない女がいた。
多くの医者にかかって、ひどく苦しめられ、全財産を使い果たしても何の役にも立たず、ますます悪くなるだけであった。
イエスのことを聞いて、群衆の中に紛れ込み、後ろからイエスの服に触れた。
「この方の服にでも触れればいやしていただける」と思ったからである。
すると、すぐ出血が全く止まって病気がいやされたことを体に感じた。
イエスは、自分の内から力が出て行ったことに気づいて、群衆の中で振り返り、「わたしの服に触れたのはだれか」と言われた。
そこで、弟子たちは言った。「群衆があなたに押し迫っているのがお分かりでしょう。それなのに、『だれがわたしに触れたのか』とおっしゃるのですか。」
しかし、イエスは、触れた者を見つけようと、辺りを見回しておられた。
女は自分の身に起こったことを知って恐ろしくなり、震えながら進み出てひれ伏し、すべてをありのまま話した。
イエスは言われた。「娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。もうその病気にかからず、元気に暮らしなさい。」
イエスがまだ話しておられるときに、会堂長の家から人々が来て言った。「お嬢さんは亡くなりました。もう、先生を煩わすには及ばないでしょう。」
イエスはその話をそばで聞いて、「恐れることはない。ただ信じなさい」と会堂長に言われた。
そして、ペトロ、ヤコブ、またヤコブの兄弟ヨハネのほかは、だれもついて来ることをお許しにならなかった。
一行は会堂長の家に着いた。イエスは人々が大声で泣きわめいて騒いでいるのを見て、
家の中に入り、人々に言われた。「なぜ、泣き騒ぐのか。子供は死んだのではない。眠っているのだ。」
人々はイエスをあざ笑った。しかし、イエスは皆を外に出し、子供の両親と三人の弟子だけを連れて、子供のいる所へ入って行かれた。
そして、子供の手を取って、「タリタ、クム」と言われた。これは、「少女よ、わたしはあなたに言う。起きなさい」という意味である。
少女はすぐに起き上がって、歩きだした。もう十二歳になっていたからである。それを見るや、人々は驚きのあまり我を忘れた。
イエスはこのことをだれにも知らせないようにと厳しく命じ、また、食べ物を少女に与えるようにと言われた。


説教
ただいま読まれました福音は、2人の人のいやしの話を伝えています。
イエスは、多くの人をいやし、救われました。

今日のマルコの福音も、イエスのなさった素晴らしい出来事を、わたしたちに語っています。
「タリタ、クム」という言葉が出ています。
「少女よ、わたしはあなたに言う。起きなさい」という意味であると、福音書自体が、説明しています。
ご承知のように、福音書は、ギリシャ語で書かれて伝えられましたが、イエスはギリシャ語でお話になったのではない。アラマイ語という言葉でしょうか。いくつかの場合、イエスがおっしゃった、その言葉自体、その言葉の音声が、人々の心に強く残ったからでしょう。そのまま他の言葉に移さないで、その音声を、そのまま伝えているという場合が、いくつかあります。
「タリタ、クム」は、その中のひとつであり、人々が見ている前で、この言葉がイエスの口から発せられると、その言葉の意味していることが、すぐに実現しました。
12年間も、出血症の苦しみを味わわされていた女性の話は、こちらもまた、少し違う様子ですが、言葉ではなく、イエスに触れることによって、イエスから、いやす力が、そのまま伝わったという場合です。触るだけで、その人から、いやすエネルギーが、あふれて伝わってくるというケースでしょう。
その際、イエスが言われた言葉が、大変印象的です。何と言われたかと言いますと、
「娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい」。
「イエスに触れさえすれば、わたしは治る」という、この女性の強い信仰、信頼があったので、すぐにイエスのほうから、力がその女性に伝わって行ったという場合でしょうか。
このようなことが、いま、本当に、わたしたちの間で、もし起これば、素晴らしいです。いまの社会、いまの日本の教会で、もし、同じようなことが、あちらでも、こちらでも起これば、わたしたちは大いに盛り上がると思いますが、そのようなことは起こらないだろうか、起こるのではないか、と思います。

そもそも、人間というのは、神様がお造りになった。だれでも、神様のお望みによって、この世に送られてきました。神様の似姿、神様にかたどられた者、神の子として、神様の作品として生まれてきた。それなのに、どうして、わたしたちは、様々な不幸、病気、あるいは、障害、その他の、いろいろな難しい問題に苦しめられなければならないのか。多くの人が、そのような疑問を持ちましたし、いまも持っていると思います。どうしてなのだろうか。神は、ご自分の造られた世界をご覧になって、「6日目に人間をお造りになったときは、極めて良かった」と言われた。それなのに、その神様の言葉と裏腹な現実があるのは、どうしてだろうか。多くの人が、この問題に、悩み、考え、取り組んできました。

さて、今日は、堅信式が行われます。
イエスは、多くの人をいやされましたが、ご自身は、わたしたちの貧しさを身に受け、人間として、貧しい、苦しい、あるいは、辛い、みじめな、などの体験をなさった。そして、十字架の刑に処せられましたが、3日目に復活し、弟子たちの間に現れ、そして、弟子たちに聖霊をお注ぎになり、わたしたちの教会を造られ、そして、この聖霊の力によって、わたしたちをさらに高め、清め、そして、神の子どもとしての素晴らしい状態に、わたしたちを招いてくださっています。

復活されたイエスは、弟子たちに言われました。「わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」。ですから、わたしたちと共にいてくださる復活されたイエスは、わたしたちのために、その恵み、光、力を注いでくださって、生きていたとき、イエスがなさっていたような、素晴らしいみわざを、わたしたちを通して、デモしてくださると、わたしたちは信じます。

もっとも、どんなに頑張っても、わたしたちの地上の生命には終わりがあります。しかし、わたしたちの信仰によれば、地上の生活が、わたしたちの人生のすべてではない。〈新しい命の出発〉、それが死です。そのわたしたちの生活、それは、イエス・キリストがお示しになった、死から命へという、素晴らしい過越しの体験を、わたしたち自身が毎日実行し、最後、永遠の命、復活の命に入るという、わたしたちの信仰の生涯を導いてくださっています。

堅信を受けられるみなさんは、この信仰と、この希望を、毎日生きてください。わたくしが毎日心配する、いろいろなことの中に、一般的な話ですが、若い人たちが、最近、あまり元気ではないということがあります。ご承知のように、どのようなわけか、日本では、自死者、自殺する人が多かった。人々の努力のおかげで、大分減ってきました。しかし、若い人の場合、若い人が自分の命を捨てるというケースは、減らないどころか、むしろ増えているという報告もある。それだけではなくて、行方不明者が多い。家族から離れ、友達から離れ、どちらかに行ってしまって、連絡が取れなくなってしまっている、若い人が、年間3万人もいる。どうして、そのようなことが起こるのでしょうか。
自分の場所が見つからないという思いでしょうか。こちらにいても仕方がないという思いでしょうか。どちらかに行って、自分の素晴らしい未来を拓くために出かけるのであれば、もちろん、親、兄弟、知り合いには、どちらで、どうするつもりかということを知らせるでしょうけれども、ある日、突然いなくなってしまう。どちらで、どうしているかのかが分からない。そのようなことが、あっても良いのだろうか。あってはいけないが、現実には起こっている。
わたしたち、教会は、そのような人々に対して、どのような苦しみ、悩みがあるのかは分かりませんが、温かく、穏やかに、迎え入れるようでありたい。「あちらに行けば、慰めがある。あの人たちとつながれば、希望が与えられる。生きる張り合いがある。頑張ることができる。」というように思っていただけるような教会に、わたしたちは成長してゆきたいと思います。

聖霊の働き、今日、みなさんに与えられる、聖霊の7つの賜物によって、苦しんでいる人、悩んでいる人、力を落としている人を励まし、導き、支えるという恵みを与えてくださる。そのための恵み、そのようにできるようにと、聖霊が与えてくださいますので、どうか、みなさんが周りの人にできることを考えて、人々の力になるように、努めていただきたいと思います。宜しくお願いいたします。



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